「思い出写真」
「証明写真」
年末年始の5日間、壁の板にそんな貼り紙がされたテントが大阪市西成区の通称「三角公園」に設けられていた。無料の「釜の写真館」だ。
カメラを手に希望者を待つのは、奈良県王寺町の石津武史さん(80)。
昨年12月30日から今年1月3日までに延べ225人を撮影。思い出づくりの撮影は200人、25人は証明写真だった。
石津さんは2005年に長く営んできた写真店をたたんだ。それ以降、趣味で下町の撮影を始め、西成に通いだした。
路上でぐっすり寝ている人、朝から酒を飲んで歌っている人。カメラを向けると嫌がる人は多いが、他の地域では見かけない光景を撮影できた。
西成労働福祉センターに集まる日雇い労働者らも撮影した。
そのうち年末年始とお盆シーズンに越冬闘争や夏まつりを実施する有志の実行委員会メンバーと知り合い、自らも実行委に加わった。自分が何か手伝うことができるなら、写真ではないかと思った。
実行委にいれば釜ケ崎の人たちに密着でき、「外の人」には難しい写真も撮りやすくなるのではないか。「少しやましい心もあったが、カマ(釜ケ崎)の人たちや暮らしぶりを知るほど、逆に撮りづらくなった」
以前はほかの街では見かけないコマを狙ったが、釜ケ崎を知れば知るほど、カマの人たちの目線と、「外の人」の目線に違いがあることにも気付いた。
「昼から路上で寝込む人の写…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル